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内科・脳神経外科・糖尿病内科・腎臓内科の
浦安やなぎ通り診療所
内科・脳神経外科・糖尿病内科・腎臓内科の
浦安やなぎ通り診療所
2020年7月5日、第23回日本認知症学会教育セミナーに参加しました。4回目の参加になります。
今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止として、Web配信での開催で、自宅で約1時間半の講義を3コマ聴講しました。
ご興味のある方は、下記のサマリーをご覧ください。
1.『認知症の画像診断』
➡︎
P E T検査は大学病院のような大きな施設で行うことができる検査です。
現時点では保険適応はないものの、認知症の補助診断に重要な役割を果たしています。
私たちが、認知症診療に最も活用している検査として、脳MRがあります。
これは、脳の萎縮の程度など最終形態を見ています。
ここまでに至る過程、病理学的変化の初期段階を見つけるために、PET検査が有用となります。
2.『認知症の病理』
認知症の責任病巣や蓄積する異常蛋白について、その伝搬仮説について
➡︎
各種染色法とアミロイドβ、タウ蛋白、TDP-43、αシヌクレインなどの特異的タンパクに対する染色を組み合わせ病理診断が行われます。
異常タンパク蓄積について
タウ(3R+4R)、アミロイド:アルツハイマー病
タウ(3R):ピック病
タウ(4R):進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など
αシヌクレイン:レビー小体病(レビー小体型認知症、認知症を伴うパーキンソン病)
*タウ:細胞内にある管状の構造物で、細胞骨格や輸送を担います。
このタウの異常病変を伴う疾患群をタウオパチーと総称されます。
成人脳でのタウ蛋白には、構造が違うものが6つあり、微小管結合部位が3カ所のもの(3リピートタウ:3R)と4カ所のもの(4リピートタウ:4R)が存在します。
そして疾患との関連では 3リピートタウが主にたまる疾患、4リピートタウが主にたまる疾患、その両者がたまる疾患に分類されます。
この異常蛋白を確認することは、認知症の鑑別に有用ですが、生前の方では、脳組織を採取することができないため、剖検例の蓄積が重要になってきます。
3.『高齢者の認知症・フレイルと老年医学的アプローチに基づく対策』
➡︎
フレイルは、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態をさします。
適切な治療や予防を行うことで、要介護状態への進行が防げます。
この時期の対策として、「高齢者糖尿病の血糖コントロール」、「多剤併用の危険性」、「フレイルの予防」などについて、臨床にそった内容の講義を受けました。
「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」:
患者さんの年齢、健康状態、治療薬の種類から血糖コントロールの指標であるHbA1cの目標値が定められます。
重症低血糖にならない管理が必要です。
「多剤併用の危険性」:
高齢者では、6剤以上の薬剤数の服用で薬物有害事象の頻度が10%以上になります。
また、5剤以上で、転倒の発生頻度が増加します。特に、睡眠薬の服用に注意が必要です。
「フレイルの予防に向けて」:
(運動)認知症予防で1日5000歩以上、高血圧・糖尿病・脂質異常症予防で8000歩以上が必要です。
10日間の臥床により、筋蛋白質合成が30%以上低下してしまいます。
(栄養)歯がほとんどなく、入れ歯未使用の方が、認知症になっていく割合が高いというデータがあります。
認知症予防に向けた食事として、高血圧・糖尿病・脂質異常症の食事を基礎にして、青魚に含まれるEPA/DHA、果物や野菜からビタミンC、ビタミンE、βカロチンなどを摂取することが効果的です。
(社会参加)社会とのつながりも重要で、就労、余暇活動、ボランティアなど積極的に社会参加をして行きましょう。
日々の認知症診療に役立てられるように、今後も学会やセミナーに参加していきたいと思います。